風水の始まり
■ 1. 風水の始まり ― 古代中国の「気」と大地の観察
風水の起源は、約4000年以上前の古代中国にさかのぼります。
当時の人々は、大地には目に見えない“気”が流れていると考え、
その流れと自然の力を読み解いて生活に活かしていました。
特に注目していたのが以下の自然要素です。
- 山の形
- 水の流れ
- 日の昇る方向
- 風の吹く向き
- 動物が住みつく場所
これらの観察によって
「気が集まる場所=住むのに吉、繁栄の場所」
「気が乱れる場所=避けるべき凶地」
という考えが生まれ、これが風水の原点です。
■ 2. 風水の体系化 ― 『葬書』と「陰宅風水」の誕生
紀元前の戦国時代〜漢の時代に入ると、風水は本格的に学問として整理されていきます。
特に大きな転機となったのが
**郭璞(かくはく)**という学者です。
彼の著書『葬書(そうしょ)』は
人が亡くなった後の埋葬地にも気の流れが作用する
という考えを体系化しました。
これがのちに
- 陰宅(お墓)
- 陽宅(住まい)
という二つの風水理論につながっていきます。
この時代から、地形・山脈・川・土地の形を読む「地理風水」が確立されました。
■ 3. 風水の二大流派 ― 形勢派と理気派
中国の歴史が進むにつれ、風水はさらに発展し、
大きく二つの流れに広がっていきました。
◎ ① 形勢派(けいせいは)
自然の形を読み解く風水。
山の高さ、川の曲がり、水の流れ、龍脈などを重視します。
- 山は龍
- 水は財
- 気の流れは生命
という考え方を持つ、もっとも古い風水です。
◎ ② 理気派(りきは)
羅盤を使い、方位・時間・気の流れを計算して判断する風水。
- 八宅
- 玄空飛星
- 三合
- 奇門遁甲
など、多くの占術・計算術がここから発展しました。
現代の「家の向き」「方角」「住む人との相性」は
ほとんどこの理気の考えです。
■ 4. 風水が政治を動かす ― 皇帝・豪族・名家が活用した力
歴代の王朝は、国の都を決める際に
必ず風水師を召し、気の流れを読ませました。
たとえば:
- 長安(唐の都)
- 北京(明・清の都)
- 南京
- 洛陽
これらはすべて風水で選ばれた都市です。
また、名家や豪族の屋敷も「龍穴」「龍脈」を見て建てられ、
その土地に住むことで一族が大きな力を得ると信じられていました。
風水はただの迷信ではなく、
国家戦略・都市計画の中心だったのです。
■ 5. 日本に伝わる ― 空海・陰陽師・武将たち
風水が日本に入ったのは奈良〜平安時代。
◎ ● 空海(弘法大師)
密教の伝来とともに、中国の陰陽五行・地理学も多く持ち帰り、
平安京の都市設計に大きな影響を与えたと言われています。
◎ ● 陰陽師(安倍晴明ら)
日本では風水・陰陽道・五行・暦術が一体化して発展し、
国家の祭祀や都の守護の中心となりました。
特に京都は、
東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武
という四神相応そのままの地形。
そのため、
- 鴨川=青龍
- 嵐山=白虎
- 桂川=朱雀
- 船岡山=玄武
という“完璧な風水の都市”と言われます。
◎ ● 戦国武将たち
- 上杉謙信
- 武田信玄
- 徳川家康
など、多くの武将が「城をどこに建てるか」に風水を活かしていました。
江戸城(現在の皇居)も風水で選ばれた土地です。
■ 6. 近代〜現代の風水 ― 世界へ広がる「環境心理学」へ進化
現代に入り、風水は中国だけでなく
台湾、シンガポール、マレーシア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地に広まりました。
そして
- インテリア
- 色彩心理
- 建築デザイン
- 都市計画
- 環境デザイン
と結びつき、**“環境心理学としての風水”**という新しい分野へ発展しています。
「風水インテリア」は、
実際に人の行動や気分に影響を与えることが科学的にも注目されています。
✦ 風水の歴史とは何か?
風水とはただの占いではありません。
- 地球の気の流れを読む科学
- 暮らしの知恵
- 都市設計の技術
- 心と空間を整える方法
として、4000年の歴史の中で研ぎ澄まされてきた「環境学」です。